手元の説明書をAIに読ませて、「あれはどこに書いてある?」と聞けたら早い。でも本当に読めているのか、書いていないことを聞いたらどうなるのかは、やってみないと分かりません。
実際に試しました。前回の要約の記事では作り話が1件も出ませんでしたが、今回は出ました。
何を試したか
使ったのは、AI録音デバイス「Plaud Note Pro」のユーザーガイド(PDF・151ページ)です。メーカーサイトから誰でも入手できるので、同じものを試せます。
これを4通りに読ませ、同じ4つの質問をしました。すべて無料の範囲です。
- 表の中の数字「この製品の消費電力は何ワットですか」
- ページをまたぐ手順「エラーが出たときの対処法を、順番に教えてください」
- 図の中の情報「本体の背面にある端子は何がありますか」
- 書いていないこと「この製品の保証期間は何年ですか」
4つ目は意地悪です。PDFに答えが載っていない質問を、わざと混ぜました。
無料でどこまでできたか
ChatGPT だけ、そもそも読めませんでした。
添付できるファイルは最大 5MB です
151ページのPDFはこの上限を超えていて、**質問にたどり着く前に終わりました。**無料で試すなら、ここが最初の関門になります。
残りの3つは、151ページを問題なく受け付けました。
| 応答の速さ | |
|---|---|
| Gemini | 4〜40秒(質問による) |
| Claude(Haiku) | 数十秒 |
| Claude(Sonnet 5) | 数十秒 |
どこで詰まったか
詰まりどころは2つありました。
1つ目 ファイルの大きさ
上に書いたとおりです。ページ数の多いPDFは、無料のChatGPTでは開けません。分割すれば通るはずですが、151ページを手で分けるのは現実的ではありませんでした。
2つ目 図の中身は、あとから確かめられない
背面の端子を聞いたとき、答えが割れました。
| 回答 | |
|---|---|
| Gemini | 充電ポート(4ピン磁気)のみ |
| Claude(Haiku) | 充電ポートのみ。「これが唯一の主要な端子です」 |
| Claude(Sonnet 5) | 充電ポートとブザー音出口の2つ |
Sonnet 5 だけが「この部分は図解で、テキストとして抽出できない」と判断し、該当ページを画像として開いて確認していました。他の2つはテキストだけを見て答えています。
ここで困ったことが起きました。**PDFを Ctrl+F で検索しても「ブザー」は出てきません。**図の中の文字は検索に引っかからないからです。
つまり、**図について聞いた答えは、あとから文字検索では確かめられません。**自分の目で図を見るしかない。これは覚えておく価値があります。
なお、Haiku の「唯一の主要な端子です」という断言は、その時点で確かめようのないことを言い切っています。他の答えと食い違っている以上、この言い方は危ないと思いました。
出てきたものは正しかったか
書いていないことを聞いたら、Gemini が答えを作りました
保証期間の質問(PDFに載っていない)への回答です。
| 回答 | |
|---|---|
| Gemini | **「1年間(12ヶ月)」と断言。**適用開始日、必要な書類まで詳細に |
| Claude(Haiku) | 「具体的な年数が明記されていないようです」 |
| Claude(Sonnet 5) | 「7.1 製品保証ポリシー」を確認。年数の記載なしと回答 |
PDFを Ctrl+F で確認しました。「1年」も「12ヶ月」も入っていません。
ここは誤解しやすいところなので、はっきり書きます。**Plaudの実際の保証が1年かどうかは、この記事の問題ではありません。**問題は、PDFについて聞いたのに、PDF以外から持ってきて答えたことです。
「この書類に書いてあるか」を知りたくて読ませているのに、書類の外から答えられては意味がありません。しかも見た目には区別がつきません。
同じことが、消費電力でも起きていました
| 回答 | |
|---|---|
| Gemini | 「充電入力 5V / 0.5A(最大2.5W)」 |
| Claude(Haiku) | 「テキストの抽出がうまくいかず、ワット数を特定できません」 |
| Claude(Sonnet 5) | 「151ページ全部確認したが、ワット数の記載なし」 |
こちらも Ctrl+F で確認しました。「5V」「0.5A」「2.5W」はいずれもPDFにありません。
Gemini は2つの質問で、2回とも、載っていない数字を具体的に答えました。
同じ数字を、違う意味で説明した例もあります
録音時間について、こう分かれました。
- Gemini:30時間(音声強化モード)/50時間(長時間駆動モード)=モードの違い
- Claude(Sonnet 5):Note Pro が約50時間、Note が約30時間 =機種の違い
30と50という数字は共通なのに、意味づけが正反対です。どちらかが間違っています。こうなると、原典に戻る以外に確かめる方法がありません。
手順を聞いたときは、どちらも実用的でした
エラー対処の質問では、大きな誤りは見当たりませんでした。ただし作りが違います。
- Gemini:症状ごとに4つに整理し直した。読みやすい
- Claude(Haiku):原文の章番号(3.1/3.2/3.3)に沿って、iOS・Android別、AirPods非対応、ケースを外す、など細かく
原文の構造をたどりたいなら Claude、要点だけ知りたいなら Gemini、という違いでした。
おまけ:まったく関係ない質問をしてみました
「これは食べられますか」と聞きました。**3つとも正しく「食べられません」と答えました。**説明書の内容だと理解した上で答えています。
明らかに文脈外の質問には、無料の範囲でもきちんと対応しました。
有料にすると何が変わるか
**ChatGPT の5MB制限は、有料にすると上がる可能性があります。**ただし今回は確認していません。
無料で目的を達成できる方法(Gemini か Claude を使う)があったため、有料を試す理由がありませんでした。
まとめ
**PDFを読ませて中身を聞くこと自体は、無料でできます。**ただし条件が2つ付きます。
**1つ目。ページ数が多いPDFは、無料のChatGPTでは開けません。**5MBを超えると弾かれます。Gemini か Claude なら151ページでも通りました。
**2つ目。「書いてあるか」を確かめる用途には、まだ使えません。**Gemini は、載っていない数字を2回とも自信を持って答えました。答えの見た目は、載っている場合とまったく同じです。
使いどころは、**「どこに書いてあるか、あたりを付けるため」**だと思います。答えをもらってから、自分でその箇所を開いて確かめる。この使い方なら、151ページを頭から読むよりずっと速くなります。
前回の記事でも同じ結論になりました。AIは「探す場所を教えてくれる道具」としては優秀で、「答えを保証してくれる道具」ではありません。
もう1つ。**答えが割れたときは、そこが怪しい場所です。**今回、消費電力・保証期間・録音時間の3か所で答えが割れ、そのすべてが実際に問題のある箇所でした。2つに聞いて食い違ったら、原典を開く合図だと考えていいと思います。
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